義経千本桜(文楽) 延享4年(1747)に初演されたもので、出雲、松洛、千柳による名作の第二作にあたります。題名のとおり義経の都落ちから吉野山隠遁までを扱っていますが、義経はワキ役で、平家方の新中納言知盛、大和の小悪党いがみの権太、佐藤忠信に化けた源九郎狐が主役です。 物語は平家滅亡の後実検に送られた平家方の首級の中で、知盛、維盛、教経の三人が偽者であったという設定を起点として、この三つの謎を解明していく過程が描かれています。又歌舞伎では、猿之助さんの宙乗りをする狐忠信のシーンでおなじみの物語です。初段から五段までで構成されていますが、吉野が舞台となるのが三段から五段目です、このコースでゆかりがあるのは四段と五段です。
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道行初音旅(四段) 静御前は義経が吉野山にいるとの噂を聞いて、忠信を共に連れ吉野へ急ぐ。途中、忠信を見失った静が初音の鼓を打つと、いつのまにかそこに忠信がいる。二人は義経のことを懐かしみ、忠信はまた兄の継信が屋島の合戦で義経の身代わりとなって能登教経の矢先にかかって討ち死にした様子を物語り、涙にむせぶ。 |
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(文楽:道行初音旅 写真:三宅晟介) |
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川連館(四段) 義経一行は九州へ下る船が嵐で吹き戻された為、大和路へ向かい、吉野山の川連法眼のところに身をよせていた。そこへ本国の出羽へ帰っていた忠信が到着。義経はさっそく伏見で預けた静のことを問うが、忠信はまったく覚えがないという。そのとき、またもや静の共をした忠信が来たとの報告、怪しんだ義経は偽忠信の詮議を言いつける。 静が初音の鼓を打つと、思ったとおり忠信が姿を見せた。偽忠信は狐だった。 初音の鼓は夫婦の狐の皮で張られていて、その子狐が忠信に化けたのだった。 親を慕う心に感じて義経は鼓を子狐に与える。喜んだ子狐は、今夜吉野山の衆徒が攻め寄せてくることを教えるのであった。 |
二人静(能)につづく